- 04/07 [PR]
- 10/03 第三十八話「唯月」
- 10/03 けんけんとつんつん。その後②
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2人の兄弟が揃って顔をあげたところで、亜嵩は唯月を振り返った。
正しくは亜嵩の身を借りた嵩尚が。
「さぁ、2人は覚悟を決めたようだ。今度は君の番。違うかい?」
促すように語りかける嵩尚の瞳は、唯月の心の揺らぎを正確に見抜いている。だからこそその迷っている背中を押してくれたのだ。
こくん、とひとつ頷き、唯月―――現在のシャオは兄弟に向き直った。
それは今まで唯月が逃げ続けてきた因縁そのものでもある。
だが今、2人は互いに歩み寄り、隣に並んで鎮座している。それはどれほどの覚悟を要してのことか。
唯月自身はこの2人に何の恨みも抱いていない。だからこそ今、ここで自分が彼らと向き合わなければならないことは重々承知のことだ。
最早迷う時間など、残されていないのだから。
唯月はゆっくりと両手をつくと、深々と頭を垂れた。そうして頭を下げたままで口を開く。
「お初にお目にかかります史義殿。それから…お久しぶりにございます、『頭』…」
「どの口が…っ」
刹那口を開いた鴇が、肩を怒らせて立ち上がった。「よせ鴇っ」 と史義がとっさに手を伸ばすより早く、鴇の手は唯月の胸倉を掴む。
「お前が、この俺を殺したお前が…っ、今更どの面下げて頭などと呼べる…!」
血を吐くような悲痛な声だった。
苦しいと嘆く、あまりに哀れな。
唯月が見やると、傍に立つ史義も、手は鴇の袖許を掴んでいながらも、わずかに顔をそらして俯いていた。
当然の反応だ。と、唯月は心の端で思った。
この手は、どんな理由があれ、鴇を殺した。その事実は最早動かすことはかなわない。
決して鴇を嫌ってなどいなかった。本心から「頭」と呼び、尊敬してすらいた。
だから。
唯月はそっとズボンのポケットに手を差し入れた。そしてゆっくりと中のものを引き出す。
引き出したそれを、唯月は鴇に見えるように手のひらの上に乗せて見せた。
「これ…覚えてますか…?」
「それは…」
はっとした表情で、鴇の目が唯月の手のひらに注がれる。
どうやら記憶に覚えがあったらしい。鴇の手が、緩やかに離れていった。
「覚えてくれてたんですね…」
わずかにかつてのつながりを取り戻せたことが嬉しくて、思わず顔をほころばせる。
そう、これは唯月が鴇率いる盗賊の一味となった日、鴇が唯月の話を親身に聞いてくれた時のもの。
―――こりゃあ願掛けさ
そんな話をした、あの夜見せたもの。
唯月がずっと身に着け続けた、あの草履の鼻緒に使われていた赤紐だ。
宿願があると。それを果たすその日までは決して脱ぐことはないと。
そう、話して聞かせたものだ。
「この時代にさすがに草履は履けませんからね…鼻緒だけこうして今も持ち歩いているんです。決して肌身から離さぬように…」
「じゃあ、願掛けってのは…」
ああ、それも覚えていてくれたのか。
目元を和ませてしまうのを禁じえず、困ったような笑みを浮かべて唯月は言った。
「その言葉に、嘘はありません」
それだけは、はっきりと断言できる。
なぜなら、これは。
「これは、あの人につけていただいたもの…そして、あの人と約束した日、俺は誓ったんです。あの人の願いをかなえるために、たとえどんな手を使おうとも後悔はしないと」
鴇の表情に翳りがさす。
わずかな間ではあったが、唯月は見逃さなかった。
後悔がないといえば、それは嘘になるだろう。
だって今日まで、幾度己を罵ったことか。
いっそ死んで楽になろうと考えなかったのは、ひとえにこの贖罪からだ。
後悔ならある。だが。迷いはない。
「この鼻緒をくださったのは、貴方方の育ての親、そして、幼少の砌、俺を拾ってくださった命の恩人です」
「あいつが…?」
兄弟の顔に驚きの色が走る。
一つ頷いて唯月はさらに続けた。
「あの人は、かつて貴方方の生みの母と思しき人物を出会い頭で斬り殺してしまっているんです」
「な…!」
「そんな話は聞いたこともない…!」
恐らく、聞かされてなどいないだろう。
この話は唯月にすら苦しんだ末、絞り出すような苦痛に彩られた声で話してくれたものなのだから。
驚愕する2人に同情はするが、しかし今は話を止めていられる猶予はない。
「ええ…いつか時が来て、俺が2人に話すことになるとわかってはいても、あの人は最後まで苦しんでいましたから…。
暗闇の中、唐突に飛び出してきたのを斬り伏せてしまったそうです。彼女は最期に、『これで自由だ』と言い残して息絶えた…」
「自由…?」
「ええ。
そしてまもなく後から現れたのが」
貴方方2人。
兄は弟を背負い、そして2人とも傷だらけだったのだという。
今振り返っても、史義はその時の記憶がない。鴇も同じく。
ただ物心つく頃には既にあの男が親代わりだった。
それで十分だったし、満足していたから何ら疑問を抱いたことすらなかったのだ。
だが。
「ではあの人は、我ら兄弟の母を殺めてしまった罪悪から、我らを引き取って…?」
「ああ、それは違います。あの人は確かにその事を深く悔やんではいましたが、お2人のことを本当に愛しておられたし、実の息子のように自慢してもいました…」
「なら、何故…」
先刻嵩尚が言った言葉が思い出される。
―――彼に頼んで君を殺させたのは―――君の父君だ
そう、唯月に鴇を殺せと命じたのは、その父だ。
実の親子でないにしろ、父と呼んだこともないにしろ、心の中ではいつも父のように慕い続けた、あの刀鍛冶師だ。
愛しているのなら、実の息子のように思うのなら、何故殺したのだ。
行き場をなくした疑問が頭の中を駆け巡る。
それはある意味において、絶望よりも苦しいもので。
「―――違うんです」
かすかに震えを帯びた声が発されたのは、その時。
「あの人じゃあありません…俺に、貴方を殺せと命じたのは…」
「貴方方の、実の父親です」
正しくは亜嵩の身を借りた嵩尚が。
「さぁ、2人は覚悟を決めたようだ。今度は君の番。違うかい?」
促すように語りかける嵩尚の瞳は、唯月の心の揺らぎを正確に見抜いている。だからこそその迷っている背中を押してくれたのだ。
こくん、とひとつ頷き、唯月―――現在のシャオは兄弟に向き直った。
それは今まで唯月が逃げ続けてきた因縁そのものでもある。
だが今、2人は互いに歩み寄り、隣に並んで鎮座している。それはどれほどの覚悟を要してのことか。
唯月自身はこの2人に何の恨みも抱いていない。だからこそ今、ここで自分が彼らと向き合わなければならないことは重々承知のことだ。
最早迷う時間など、残されていないのだから。
唯月はゆっくりと両手をつくと、深々と頭を垂れた。そうして頭を下げたままで口を開く。
「お初にお目にかかります史義殿。それから…お久しぶりにございます、『頭』…」
「どの口が…っ」
刹那口を開いた鴇が、肩を怒らせて立ち上がった。「よせ鴇っ」 と史義がとっさに手を伸ばすより早く、鴇の手は唯月の胸倉を掴む。
「お前が、この俺を殺したお前が…っ、今更どの面下げて頭などと呼べる…!」
血を吐くような悲痛な声だった。
苦しいと嘆く、あまりに哀れな。
唯月が見やると、傍に立つ史義も、手は鴇の袖許を掴んでいながらも、わずかに顔をそらして俯いていた。
当然の反応だ。と、唯月は心の端で思った。
この手は、どんな理由があれ、鴇を殺した。その事実は最早動かすことはかなわない。
決して鴇を嫌ってなどいなかった。本心から「頭」と呼び、尊敬してすらいた。
だから。
唯月はそっとズボンのポケットに手を差し入れた。そしてゆっくりと中のものを引き出す。
引き出したそれを、唯月は鴇に見えるように手のひらの上に乗せて見せた。
「これ…覚えてますか…?」
「それは…」
はっとした表情で、鴇の目が唯月の手のひらに注がれる。
どうやら記憶に覚えがあったらしい。鴇の手が、緩やかに離れていった。
「覚えてくれてたんですね…」
わずかにかつてのつながりを取り戻せたことが嬉しくて、思わず顔をほころばせる。
そう、これは唯月が鴇率いる盗賊の一味となった日、鴇が唯月の話を親身に聞いてくれた時のもの。
―――こりゃあ願掛けさ
そんな話をした、あの夜見せたもの。
唯月がずっと身に着け続けた、あの草履の鼻緒に使われていた赤紐だ。
宿願があると。それを果たすその日までは決して脱ぐことはないと。
そう、話して聞かせたものだ。
「この時代にさすがに草履は履けませんからね…鼻緒だけこうして今も持ち歩いているんです。決して肌身から離さぬように…」
「じゃあ、願掛けってのは…」
ああ、それも覚えていてくれたのか。
目元を和ませてしまうのを禁じえず、困ったような笑みを浮かべて唯月は言った。
「その言葉に、嘘はありません」
それだけは、はっきりと断言できる。
なぜなら、これは。
「これは、あの人につけていただいたもの…そして、あの人と約束した日、俺は誓ったんです。あの人の願いをかなえるために、たとえどんな手を使おうとも後悔はしないと」
鴇の表情に翳りがさす。
わずかな間ではあったが、唯月は見逃さなかった。
後悔がないといえば、それは嘘になるだろう。
だって今日まで、幾度己を罵ったことか。
いっそ死んで楽になろうと考えなかったのは、ひとえにこの贖罪からだ。
後悔ならある。だが。迷いはない。
「この鼻緒をくださったのは、貴方方の育ての親、そして、幼少の砌、俺を拾ってくださった命の恩人です」
「あいつが…?」
兄弟の顔に驚きの色が走る。
一つ頷いて唯月はさらに続けた。
「あの人は、かつて貴方方の生みの母と思しき人物を出会い頭で斬り殺してしまっているんです」
「な…!」
「そんな話は聞いたこともない…!」
恐らく、聞かされてなどいないだろう。
この話は唯月にすら苦しんだ末、絞り出すような苦痛に彩られた声で話してくれたものなのだから。
驚愕する2人に同情はするが、しかし今は話を止めていられる猶予はない。
「ええ…いつか時が来て、俺が2人に話すことになるとわかってはいても、あの人は最後まで苦しんでいましたから…。
暗闇の中、唐突に飛び出してきたのを斬り伏せてしまったそうです。彼女は最期に、『これで自由だ』と言い残して息絶えた…」
「自由…?」
「ええ。
そしてまもなく後から現れたのが」
貴方方2人。
兄は弟を背負い、そして2人とも傷だらけだったのだという。
今振り返っても、史義はその時の記憶がない。鴇も同じく。
ただ物心つく頃には既にあの男が親代わりだった。
それで十分だったし、満足していたから何ら疑問を抱いたことすらなかったのだ。
だが。
「ではあの人は、我ら兄弟の母を殺めてしまった罪悪から、我らを引き取って…?」
「ああ、それは違います。あの人は確かにその事を深く悔やんではいましたが、お2人のことを本当に愛しておられたし、実の息子のように自慢してもいました…」
「なら、何故…」
先刻嵩尚が言った言葉が思い出される。
―――彼に頼んで君を殺させたのは―――君の父君だ
そう、唯月に鴇を殺せと命じたのは、その父だ。
実の親子でないにしろ、父と呼んだこともないにしろ、心の中ではいつも父のように慕い続けた、あの刀鍛冶師だ。
愛しているのなら、実の息子のように思うのなら、何故殺したのだ。
行き場をなくした疑問が頭の中を駆け巡る。
それはある意味において、絶望よりも苦しいもので。
「―――違うんです」
かすかに震えを帯びた声が発されたのは、その時。
「あの人じゃあありません…俺に、貴方を殺せと命じたのは…」
「貴方方の、実の父親です」
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おねむです。
こんばんゎです
鬼は本日小学部の遠足の引率に来ております
宿先は丹波。
途中で嵯峨や嵐山に寄り、トロッコ列車に乗ったりオルゴール館に行ったりもしました
嵯峨野にあるオルゴール館
いろんなオルゴールを見学できたり、その演奏を実際に聞けたりするんですよ
時代を重ねてきた趣あるオルゴールたちの幻想曲、ぜひ一度聴いてみてはいかがでしょう?
トロッコ列車に乗ると、素晴らしい景色が眼下に広がります
車掌さんが直々に解説トーク
写真のベストショットというところで一旦停車してくださるという車掌さんからのプレゼント付き
さらに途中で乗ってくるのはなんと鬼
怖い顔してユニークパフォーマンスを披露してくれちゃいます
激しすぎてズラがすっ飛ぶというハプニング付きでした(笑)
なかなか楽しみ満点の嵯峨嵐山
ぜひ一度
ですよ
さぁ小学生の男の子たちと今から雑魚寝してきまーす誧


こんばんゎです

鬼は本日小学部の遠足の引率に来ております
宿先は丹波。
途中で嵯峨や嵐山に寄り、トロッコ列車に乗ったりオルゴール館に行ったりもしました

嵯峨野にあるオルゴール館

いろんなオルゴールを見学できたり、その演奏を実際に聞けたりするんですよ

時代を重ねてきた趣あるオルゴールたちの幻想曲、ぜひ一度聴いてみてはいかがでしょう?
トロッコ列車に乗ると、素晴らしい景色が眼下に広がります
車掌さんが直々に解説トーク
写真のベストショットというところで一旦停車してくださるという車掌さんからのプレゼント付き
さらに途中で乗ってくるのはなんと鬼

怖い顔してユニークパフォーマンスを披露してくれちゃいます

激しすぎてズラがすっ飛ぶというハプニング付きでした(笑)
なかなか楽しみ満点の嵯峨嵐山

ぜひ一度
ですよさぁ小学生の男の子たちと今から雑魚寝してきまーす誧

な某友人と昼より出かけております